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ビデオゲーム移植を成功に導く必須の要素トップ5
ゲームの移植とは、1つのプラットフォームに対応している既存のビデオゲームを、別のプラットフォームでプレイできるように適合させることです。ゲームのスタジオやパブリッシャーが移植を検討する最大の理由は、ゲームのプレイヤー数増加が見込めるためです。今日では、ビデオゲームはグローバルに普及しています。複数のゲームプラットフォームを所有しているプレイヤーは一部ですが、一家に一台でゲーム機を持っている家庭の方がはるかに一般的です。そのため、可能な限り多くのプレイヤーにゲームを届けるには、移植する必要があります。例えば、あるタイトルがPlayStation 5向けに開発・リリースされた場合、それをPC向けに移植すれば、そのリーチ範囲は実際に拡大するでしょう。
しかし、ゲームの移植に関わるプロセスは、移植するという決断ほど単純ではありません。各プラットフォームは根本的にアーキテクチャがそれぞれ異なるため、移植の難易度が高くなるのです。また、ゲームを移植するプラットフォームを決定する際には、UI、入力、アウトリーチも考慮しなければなりません。ビデオゲームの移植を成功させるために、必須となる要素のトップ5を見ていきましょう。
各プラットフォームには、構造的に大きな相違があります。移植に大きな影響を与える要素のひとつが、最適化です。
対象のプラットフォーム上で、ゲームのビジュアルとゲームプレイを最高の状態にするために行うプロセスのことを、最適化といいます。最適化が正しく行われていないと、不具合、フレームレートの問題、グラフィックの異常など、パフォーマンスの問題を引き起こす場合があります。そして、このような問題がプレイヤーの感情にネガティブに影響すると、すぐに売上にも響いてしまいます。
異なる家庭用ゲーム機のプラットフォーム間では、GPUのスペックや電源の要件が異なるため、それぞれに最適化するのは困難な作業です。それでも、PlayStation 5やXbox Series Sのような家庭用ゲーム機はハードウェアが一定であるため、性質はよく知られています。一方、PCのスペックは一台一台大きく異なります。そのため、PCからゲーム機への移植は、その逆よりも容易になる傾向があります。 ともあれ、最適化には一般的に経験則があります。移植版の性能目標、つまりクライアントが要求するパフォーマンスレベルを知ることが重要ということです。このレベルは、移植されるゲームがテンポの速いアクションなのか、あるいはストーリーに重点を置いたスローなRPGなのか、ゲームのタイプに左右される傾向があります。フレームレートよりも美麗なビジュアルを優先するか、グラフィックの忠実度を少し犠牲にして動きをスムーズにするか、この判断を行います。これは移植業務が始まる前に設定されます。
ゲームプレイを考慮することはさておき、移植を成功させるためには、プレイヤーとゲームとの相互作用を再度考え直すことが不可欠です。PCゲームと同様にキーボードとマウスを使うようにすれば、カーソルを乗せてクリックするだけなので、より高度なメニュー操作が可能です。しかし、家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機のプラットフォームでは、すべての操作を備え付けのスティックやボタンで行わなければなりません。
PCの複雑なインターフェースを移植するにあたって、ホイールメニューを採用する方法がすでに実証されています。直線的なインターフェースではなく、円形のインターフェースを用いることで、ホイールメニューはスティックの可動性を生かします。各選択肢が円の外周に並び、スティックをその角度に倒すだけで簡単に選択できます。これらのメニューは専用のボタンで呼び出せるようになっており、プレイヤーが複数のメニューを選択する手間を省くことができるのです。
これ以外にインターフェースとして標準的なのは、スティックや方向キーを使ってUI要素をハイライトし、選択用に割り当てられたボタンを押して選択するというものです。しかし、これらは時間やコスト的に抜本的作り直しができない場合に、既存のUIを使い回す回避策でしかありません。理想的には、前もってゲームスタジオ側がゲームの移植先を考え、そのすべてに等しく適合するインターフェースをデザインするのが最良でしょう。
最近のPCゲームでは、プレイヤーの好みに応じて、プレイにコントローラーとキーボード・マウスのどちらを使うか選択できるものが多いというのも、面白い現象です。
ゲームがどのプラットフォームに移植されるかは決まっていません。しかし、もし移植するとなれば、最初のプラットフォームで体験できることが正確に移植されていることが期待されます。移植先のプラットフォームでは固有機能を活用すれば、移植の完成度を高めることができます。
例えば、PlayStation 5のコントローラーには、「ハプティックフィードバック」という機能が搭載されています。「ハプティック」とは触覚という意味で、振動を利用して触ったような感覚を作ることを指します。このような機能はPS5が初めてではありません。しかし、幅広い感覚を作り出せるよう、トリガーボタンやスティックで抵抗を感じられるようになるなど、フィードバックの幅を広げることができます。したがって、例えばPCからPlayStation 5に移植する場合には、PCプラットフォームにはないこのハプティックフィードバックを取り入れれば、大きなメリットが得られるでしょう。
PCでの強みは、ゲームプレイ体験をカスタマイズするオプションの幅が広いことです。プレイヤーが所有しているハードウェアによっては、好みに応じてゲームプレイやグラフィックを家庭用ゲーム機よりもはるかに大幅に調整することができます。前述のように、入力方法もコントローラーとキーボード・マウスからプレイヤーの好みで選択できます。ゲームプレイのコミュニティが作成したMODを使えば、キャラクターの外見やゲームプレイそのものが変わるゲームもあります。
このように、移植の際にプラットフォーム特有の要素を加えることは、スタジオとパブリッシャーの損になることはありません。そうすることで、ゲームのプレイヤーから好意的に受け止められ、信頼と次のリリースへの期待が生まれるのです。
ソーシャルメディアとオンラインレビューの影響力には、計り知れないものがあります。新作ゲームは、リリース前に発表と宣伝というサイクルを経るのが一般的です。これにはインフルエンサーやレビュアーに接触し、事前に盛り上げておくことも含まれます。
しかし、最初のプロモーション活動のインパクトが、その後の移植版のリリースまで持続すると思うのは甘い考えです。近年のリリーススケジュールは過密しており、ゲームは日々リリースされているため、プレイヤーはいつでも新作をプレイすることができます。そのため、移植作の発売を忘れてしまったり、発売後に見過ごしてしまったりしがちです。
ゲームを新たに移植するなら、まだゲームを知らないプレイヤー層への新たな働きかけの機会と考えるべきです。この場合パブリッシャーは、オリジナル版のリリースで良かった点、悪かった点を学ぶことができます。これにより前回の失敗を回避でき、メッセージは調整あるいは完全に書き直しできます。また可能であれば、新しいプラットフォームのコミュニティ向けに、特有の要素に合った新しいプロモーション用アートワークやテキストを作成することもできるでしょう。
新しいプラットフォームにゲームを移植してユーザー数を増やすという目標は、事実上当然のことではあります。その新しいプラットフォームで、ゲームを長続きさせるには、運、タイミング、アートをすべてミックスさせるしかないのです。新しいプラットフォームでライブサービス要素(定期的なコンテンツ追加や、新スキンやシーズンなどのゲームアップデート)を期待するプレイヤーはいるのでしょうか? モバイルデバイスに移植されたゲームにはよくあることです。新プラットフォームでのサービス開始後、これらの変更によって、特定のゲームプレイやプレイヤーサポート、コミュニティ要素に影響が及ぶ可能性はあるのでしょうか?メインのファン層が存在するハードウェアに移植したら、コミュニティの反応は異なるでしょうか? 例えば、PlayStation VRからOculus Meta Questにゲームを移植する場合です。このような点は、新規IPを使ったゲームであれ、何十年もの根強いファンを持つ既存IPであれ、ゲームの移植作業に取り掛かる際に考慮すべき点です。
1つのプラットフォームから別のプラットフォームへのビデオゲームを移植する際は、決して画一的なプロセスを行ってはなりません。互換性の問題への対処、移植先プラットフォーム独自の機能、ゲームの潜在的な新しいユーザー層など、考慮すべき要素がいくつか存在します。信頼できる移植パートナーは、このような懸念事項をすべて把握しています。デベロッパーが新しいプラットフォームへのゲーム移植に挑戦する際には、成功へと導いてくれるでしょう。
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